ニーチェ・毎日を肯定して生きる

社会学的考察

私が占いで使っているタロットはオカルティストとして有名なアレスター・クローリーが作者。著書はオカルトと東洋思想のないまぜで、博識絢爛で自分に酔っているようにしか思えない内容、しかしクローリー作のタロットは、ニーチェ哲学が反映されているモチーフが散見され、(しかも永劫回帰とはどうなのよ、)なので私はこのタロットを使うんですよね。ちなみにクローリーにはビートルズやオジー・オズボーンなど熱烈な支持者がいて、わからなくもないな、人は投影するから、なんて思ったりもします。


ニーチェは「神は死んだ」と名著「ツァラトストゥラ」の冒頭で語り、その題名はドイツ語読みのゾロアスター教。果たしてゾロアスター教を知っている人がどれだけドイツにいたのか疑問に思いますが、当初は売れなかったんですね。ダーウインがすでに進化論を発表した後に「人間は猿と超人の間を綱渡りする存在だ」、と堂々と主張する一節など斬新で痛快であるのに、売れ出すのはニーチェが発狂してからで、その頃ニーチェは母につきっきりでピアノをよく弾いていたそうです。ツァラトストゥラを翻訳された木田元さんのエッセー「ピアノを弾くニーチェ」も、優しいお人柄が現れていて好きでした。


個々の人間が幸せに生きるためには、辛い経験も失敗も、これまでの人生を肯定すること。
人と比べたり自分を卑下せず、むしろ未来のために生きるべき。
道徳や宗教心も、漠然とした「真理」を追求していては現実的ではない。


ツァラトストゥラでは、喉に蛇が入り、男が必死に噛み切る場面がありますが、九死に一生を得る経験をした人の話は、生きている自分に感謝していますし、ニヒリズムという絶望感や挫折を経験することは、長い人生で悪くはない転機です。社会派の映画が好きな人は、タル・ベーラ監督の「ニーチェの馬」はお勧めですね。本当に絶望的に暗い。「サタンタンゴ」は438分という長さで、ああ、これはもうむしろ鑑賞し終えることに挫折しなければ、ということなんですが、どちらもモノクロで、内容よりも単調さに絶望感を味わう映画ですが、人は本来、単調さに耐えられない生き物なんですって。なので単調な生活から解放されたい人は、行動するチャンスにぜひ。良薬口に苦しと言いますもんね。