人は生きている限り、色々なことを悩み考え、落ち着くところに落ち着くものですが、それくらいの気持ちで、なんとかなるさ!と思うことが自分を楽にしてくれますよね。マルセイユタロットの奇術師のカードはそのような趣があるのですが、奇術師とはどんな存在であったか?と考えると私たちはよく知らないんですよね。
奇術師の絵柄は、能天気なアホさ加減満載の道化師です。しかし昔の西洋では旅芸人の道化師ばかりではなく、宮廷御用達の道化師もいました。王は治世のため、制する土地を移動しながら旅をしまくったし、各地にある宮殿で贅沢三昧な晩餐会を夜な夜な開き、気晴らしのために雇われた今でいうお笑い芸人のようなピエロがいて、皆を笑わせ場を盛り上げていました。
役割はそれだけでなく戦いになると戦場にまで道化師たちは連れ出され、戦士たちの士気を高める役割も担うのでした。挙句の果てに終始がつかなければ勝算の計らいのために敵陣に交渉に出向かされ、そろそろ降参してはどうかと条件を伝える役目まで担わされた後、道化師は恐怖に慄き、運悪く殺された挙句には鉄砲玉にされて味方に投げ返されたり、もう踏んだり蹴ったりの存在でした。
そういう繋がりでいえば、ホアキン・フェニックス主演の2019年作映画「ジョーカー」のピエロは圧巻でした。まるでジョーカーの生い立ちや境遇が道化師そのもので、散々たる逆恨みの様相は否めないものですが、まるで歴史に刻まれた道化師の恨みが濃縮されているようで、道化師の恨みが襲いかかっているんじゃないかと思えるほど、生死を振り切った行動が潔く私はスッキリするんですよね。ちょっとヤバい告白ですが!