押し入れのプラダ

四柱推命

四柱推命には「丙午」という干支がある。

丙午の人は、「好き」や「これがいい」という自分の基準を大切にしたい。

周囲がどう思うかより、自分が納得できるかどうかを優先したいところがあるようだ。

私の母は丙午の人だ。

 

妹が20代の時、イタリア旅行でプラダのバッグを買った。

結婚して使うことが減ったのか、それを母に譲った。

母と出かける時に持っていたのは遠い昔。

それを思い出した私は、

「使わないなら譲って。」と母に言ったことがある。

母は、

「もう捨てた。」

と言った。

後日妹とお茶をした時、妹も同じことを母に聞いていた。

私は少し笑ってしまった。

そして私と妹は、

「絶対捨ててへんよな。」

「まあ、お母さんやもんな。」

と納得するしかなかった。

 

母は、こんなことも言っていた。

ルイヴィトンが大流行する前の頃のことだ。

新幹線でモノグラムのバックを持っている人を見かけ、

目が釘付けになったらしい。

それが「パピヨン」だったか「アマゾン」だったか、私にはわからない。

母はその後の大流行に、ときめきを感じたのだろうと思う。

ただ、当時の母に買う余裕はなかった。

 

あの押し入れには、きっと今でも母のお気に入りが眠っている。

私は、次にあのバッグを譲り受けるのは姪だと思う。

いつか姪が押し入れの奥から見つけて、

「えっ、こんなんあったん?かわいい!」

と目を輝かせる姿を想像する。

物の価値は時代とともに変わっていく。

 

母にとって押し入れに「しまっておくこと」は、「思い出のカプセル化」なのだと思う。

母は、自分が納得した時にだけ物を手放す。

母を見ていると、丙午という干支の魅力は、こういうところにあるのだと思う。