あの日、私は雑貨店のクッションに目が止まった。
キリン顔のクッションは、じっと私を見ていた。
帰宅してソファーに置くと、部屋の空気が少し変わった。
そのキリンは、妙に浮いた存在感になっていた。
とりあえずベットルームに避難させたが、
ベットの上でもどこか居心地が悪そうだった。
行き場をなくしたキリンを眺め、私は衝動買いを、少し後悔した。
母に連絡をし、ゴブラン織のクッションを使わないかと聞いてみた。
ついでに、長く仕まわれていた抹茶碗の写真も送付した。
この抹茶碗は譲り受けたものだった。
薄茶色の箱を開けると、
茶碗には”お多福”が描かれていた。
そして横には、黄ばんだ和紙が折り畳まれ、作者の経歴が記されていた。
しばらくして母から返事が来た。
実家には妹が寄っていて、二人で話し合ったらしい。
クッションは妹へ、抹茶碗は母が引き受けてくれることになった。
母は、「抹茶碗は正月に使うか、普段は漬物を入れたらいい」と言った。
その瞬間、抹茶碗は再び”使われる器”へ戻った気がした。
抹茶碗の外側には「百楽」と筆文字で描かれていた。
お多福と百楽。
そこには、日々を楽しむ意味が込められている。
私の心は、送り出す準備が静かに整った。
今日のカードは、世界
世界は循環する。
役目を終えたものが、次の循環へ自然に流れていく。
