藤田美術館──美術品を見たあとに見つけたもの

日常

藤田美術館へ行ってきた。

入口には、かつての蔵の扉が残されていると聞いていたので、まずはそれを見るのが楽しみだった。

黒い扉には藤田家の紋が入っている。係員の方の説明によると「変形三葉」というらしい。

 

展示室には、能面や能装束、漆に貝細工を施した硯箱など、細かな手仕事によって作られた美術品が並んでいた。

特に目を引いたのは、能面と着物だった。

着物には息を呑んでしまうような精密な刺繍が施されている。どれだけ時間をかけて作られたのかと思いながら、しばらく見惚れていた。

能面は、正面から見ると、こちらを無表情で見返してくるような感じで怖い。

人間の顔をかなり観察したんだろうと能面を真正面から見て考えた。それにしてもそれを形にし続けてきた職人の技術には、驚くというより、しみじみと眺めてしまうものがあった。

最後の展示室には、昔の蔵の床材や展示ケースも残されていた。

見学を終えて、お茶を飲もうと長椅子に腰かけた。

大きな角材を横に置いた感じで、背もたれも何もないのに、安らぐ感じの座り心地だった。

 

入口の蔵の扉が再利用されているのだから、これも昔の蔵の材木ではないだろうか。形からすると梁のようだと思った。

係員の人に尋ねると、やはり蔵の梁を再利用したものだった。

「横から見ると年輪がありますよ」

教えてもらって横から覗き込んだら、大きな木の年輪が見えた。さらにお茶を乗せるトレーも、同じ木材をスライスして作られているのだった。

美術品を眺めに来たつもりが、最後には座っている長椅子まで眺めていた。

天然の木材の感触というのは心が安らぐ。その実感を最後に味わった。