紫微斗数では「七殺」と呼ばれる星がある。
七殺は何事も即断即決。覚悟を決めたら迷わず前へ進む星だ。
自由に行動し、達成感を味わうことで充実感を覚えるのだ。
そして天梁という星もいる。
天梁は正直で努力家。そして誰も困らないように先回りして考える星でもある。
誰も困らず一日を終えることが天梁の安心感につながるのだ。
ある日、七殺は天梁と仲間を登山に誘った。
天梁ような石橋を叩いて渡るような人物は、入念な準備を怠らない。
七殺は昨晩やっと、必要なものをリュックに放り込んだ。
足りないものは天梁が持ってきているはず、そう見込んでいた。
それでも七殺は山頂に立てる旗だけは忘れなかった。
その日の夜明け、空は明るく晴天だった。
「順調にいけばあと2時間、頂上に旗を立ててやる!」
七殺は、あと少しだから頑張ろう!と仲間を励ましながら悠々と先頭を歩いていた。
ところが少し経ち、天梁はその旗のはためきが尋常ではなく大きいことに気づいた。
「七殺、雲行きが怪しくなるかもしれない。山の天気は急変する、このまま進めば下山できないかもしれない」
一旦立ち止まると天梁は天気予報を確かめた。
七殺は待つ間、急激にイライラし出した。
「ここで時間を潰すより、天気が崩れる前に登り切った方がいい!」
七殺は一度決めた勢いを止められることが、何よりも苦手なのだ。
「もう今日は無理です。七殺さん、雨の中を下山して誰かが足をくじいたらどうするんですか。今日は引き返すという判断も必要です。」
それでも七殺は引き下がらない。
「雨が降るまでまだ余裕で到着できる。」
むしろ誰かが足をくじいたら、自分がおぶって下山する覚悟さえしていた。
しかし天梁は諦めなかった。
「いや、いつでも山は登れます。やはり安全第一です。」
七殺は最後まで納得していなかった。
それでも引き返す時にもまた先頭を歩いた。
七殺は、天梁が先回りして危険を避けようとすることを知っている。
しかし、まだ十分登頂まで時間があると考えていた。
天梁も、七殺の責任を引き受ける度胸が備わっていることを知っている。
ただ天梁にとっては一人でもけが人が出れば、この登山は成功とは言えなかったのだ。
結局、山頂に旗は立たなかった。
それでも全員が笑顔で麓へ戻ってきた。
天梁にとっては、それこそが何よりの成功だった。
